その日のまえに 重松 清 「その日」とは、誰にもいつかは訪れる「死を迎える日」。 それぞれの主人公が、 「その日」と向かい合いながら生きていく日常が描かれている。 本当なら、「泣ける本」「切ない本」と言った方が 正しいのかもしれない。 実際私は、通勤の電車の中でこの本を読んで涙が止まらなくなり、 人目憚らず大泣きしてしまった。 しかし、その次々に溢れてくる涙がなぜかとてもあたたかくて、 それが余計に泣けた。 うまく言い表すことができないが月並みな言い方をすれば、 今たしかに自分がここに生きているのだと 改めて実感させるようなあたたかさ。 「外に向かってはじけるのではなく、内側に静かに染みていく喜びがある。」 これは、この本のある一節。 この本全体にとってみれば、たいして重要な役割も持たない、 とるに足らない一文かもしれないが、私は妙に納得した。 「死」というものに付随する様々な感情は、 人が生きていくうえで避けては通れない普遍的な課題である。 ただ、だからこそ悲観的になるのではなく、 もっと「生」を前向きに受け入れることができるのではないか。 もっと人にやさしくなれるのではないか。 そんなことを、じんわりと伝えてくれる1冊。
by minicat_orange
| 2007-03-24 13:11
| ☆今日の1冊
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