犯人に告ぐ

「犯人に告ぐ」(文庫版)          
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私は、普段こういう類の小説は、まったくと言っていいほど読まない。
ミステリーというのか、警察小説というのか。
決してキライとかではなくて、 楽しみ方が下手なのだと思う。

事件の犯人やトリックを推理しようという欲求はあんまりなくて、
ただ淡々と読み進めてしまうから、
決してつまらないわけではないのだけれど、
読み終わった後「ふーん・・・。」となりがち。

それでも、この本を読んでみようと思ったのは、
「クローズド・ノート」を書いた雫井脩介さんの本だったから。
以前、このブログでも紹介したけど、
「クローズド・ノート」はとってもあったかい本だったから。
映画化に際して文庫化されたらしいので、
読んでみました。

まず、率直な感想は、
すごーくおもしろい!!
ミステリーに不慣れな私でも、かなり楽しめました。
毎日、通勤の電車の中で読んでいたのだけれど、
続きが気になって気になって、
駅に着いてしまうと「あぁ、もっと読みたい」と我慢できず、
大江戸線の長い長いエスカレーターでもつい本を開いてしまう程、
衝撃的なおもしろさでした。

巻島という刑事の苦い過去からはじまる。
彼は、誘拐犯を取り逃がし、誘拐された子どもは殺されてしまう。
その上、その後の記者会見で醜態をさらし、 世間の非難を浴びる。

その6年後。
小さな子どもを狙った 新たな連続誘拐殺人事件が起こる。
捜査は難航し、警察に対する批判はピークに達する。

「劇場型犯罪」への対抗策として持ち上がったのが、「劇場型捜査」。
テレビから犯人に呼びかけ、劇場へ引っ張り出そうという作戦。
その役に抜擢されたのが、巻島だった。

警察内外にひしめく敵の中、
巻島は事件へと立ち向かっていく。

この小説のおもしろさは、
やはり人間の描かれ方によるものだと思う。
ミステリーでありながら、人間心理を衝いている。

最大の魅力が、巻島にあるのは言うまでもない。
アウトローなキャラだが、
そこに至った経緯は特異でも何でもない。
この社会に生きるものになら、誰にでも起こりかねない。

そして脇を固める登場人物も、
それぞれみな「人間」というものを端的に表している。

正義感、出世欲、責任感。
妥協、あきらめ、ずるさ。
愛情、孤独感、独占欲。
社会に対する怒り、不安。

どれもこれも、
誰もが 当たり前に持っているものである。

そのバランスが崩れ、
何かの拍子にひとつのものが爆発してしまう。
そうして人は、過ちをおかすのかもしれない。

ミステリーを、こういう切り口で読めるとは思わなかった。
事件は実際にこの世界でいくつも起きているのだから、
もはや ミステリーなどと呼んでいられないのかもしれない。

映画も観に行こうと思う。
自分にも、弱いところがたくさんあるから。
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by minicat_orange | 2007-10-26 09:05 | ☆今日の1冊
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